終戦記念日 「追悼施設」議論 具体化せず
(毎日)
河野洋平衆院議長は15日、全国戦没者追悼式での「追悼の辞」で、靖国神社に代わる新たな無宗教の戦没者追悼施設の建設を強く求めた。小泉純一郎元首相の毎年の靖国参拝が中国や韓国の反発を招いた2年前、政界では打開策としてさまざまな追悼施設案が提唱されたが、小泉氏の退任とともに議論はさたやみになっている。河野氏の発言は、靖国問題が根本的に解決していないのに、一度口にした提案の実現に努力せず、放置している政治家の責任に一石を投じたと言えそうだ。【高山祐、野口武則】
「政府が先頭を切って突っ走るべき話ではない。国民の議論をよく見極める必要がある。今、慌ててアクションを取る状況にはない」。町村信孝官房長官は15日の記者会見で、新たな追悼施設構想に消極的な考えを示した。政府は09年度予算案でも、建設の前提となる調査費の計上を見送る方針だ。
この構想は、01年8月13日に当時の小泉首相が靖国神社に参拝したのを受け、福田康夫官房長官(現首相)が検討を表明した。靖国神社にはアジア・太平洋戦争を指導したA級戦犯たちが合祀(ごうし)され、参拝は戦争責任への態度が問われる。一宗教法人である同神社に首相が参拝することは、憲法の政教分離原則に反する疑いもある。こうした問題を克服するのが狙いだった。
同年12月、福田氏の下に「追悼・平和祈念施設の在り方を考える懇談会」が設置され、懇談会は02年12月、「国立の無宗教の恒久的施設が必要」との報告書をまとめた。これを受け、政府内では建設場所として「北の丸公園」(東京都千代田区)も検討されたが、小泉氏が参拝を続けたため、それ以上具体化は進まず、構想はたなざらしとなった。
その後、追悼施設論議が再燃したのは06年、自民党総裁選に向けた「ポスト小泉」の動きが活発になったころだ。福田氏の擁立を目指した自民党の山崎拓前副総裁が会長となった超党派議連が同年6月、首相の靖国参拝を「違憲の疑いがある」として、無宗教の国立追悼施設の建設を求める提言をまとめた。
また、麻生太郎外相(現自民党幹事長)も8月、靖国神社を非宗教法人化する私案を発表した。同神社が宗教法人でなくなれば、新たな施設をつくらなくても、首相参拝の是非論の解決や、天皇陛下の参拝実現につながるとの主張だ。
一方、日本遺族会会長の古賀誠自民党選対委員長は同じころ、A級戦犯の分祀の検討を提唱した。これも靖国神社を「すべての国民がわだかまりなく参拝できる施設」に変える案と言える。
しかし、福田氏はタカ派色が強い安倍晋三前首相との対立を避け、06年9月の総裁選への出馬を見送った。総裁選で圧勝した安倍氏は在任中に靖国神社に参拝せず、追悼施設構想にも否定的だったため、議論は再び宙に浮いた。福田氏は昨年9月の総裁選で「石を投げる人がいる状況でつくっていいのか」とトーンダウンさせた。首相就任後も世論にらみの「待ち」の姿勢を続けており、議論が具体化しない一因になっている。



